KDDIは、12月10日に特別企画商品として4G LTEケータイの「G'zOne TYPE-XX」を発売します。価格は5万2800円。高耐久を売りにしたG'zOneが久々に復活した格好で、原点に返り、スマホではなく、VoLTE対応のフィーチャーフォンとして開発されました。
KDDIは、18年11月に4G LTEケータイとして「INFOBAR xv」を復活させましたが、G'zOne TYPE-XXもそれに近い位置づけの端末です。一方で、INFOBARはあくまでKDDIのau Design projectが主導していた端末で、メーカーはいわば黒子のような存在。これに対し、G'zOneシリーズはカシオ計算機製の端末で、ブランドも同社が保有していました。
ところが、ご存じの通り、すでにカシオは携帯電話事業から撤退しています。そのため、G'zOne TYPE-XXは、KDDI主導でカシオのデザイナーに依頼しつつ、端末は同じく高耐久端末で定評のある京セラが製造しています。
高耐久端末として「TORQUE」シリーズを展開する京セラですが、そのメーカーにあえて他社ブランドの端末製造を依頼したのは、ひとえにG'zOneのブランド力が健在で、今もユーザーからの厚い支持があったからです。
KDDIによると、なんとG'zOneユーザーの98%が現在もフィーチャーフォンを使っているとのこと。利用期間がもっとも長いユーザーに至っては15年間、同じ「G'zOne W42CA」を使い続けているといいます。
しかも現行のKDDIのラインナップに対しての不満が、平均値より3倍も高く出ています。G'zOneがないゆえに、ラインナップに満足できないというわけです。定期的にTORQUEを投入している京セラが少々不憫になる結果ではありますが、KDDIとしては、G'zOne TYPE-XXの投入をきっかけに、TORQUEの存在に気づいてもらいたいという思いもあるそうです。
KDDIのパーソナル企画統括本部 プロダクト企画部 近藤隆行氏は、「TORQUEの耐久性の高さを感じていただきたいというのが裏テーマだった」と語ります。
1台の端末を長く使い続ける傾向の強いG'zOneユーザーですが、22年3月にKDDIは3Gを停波するため、端末を使い続けることができなくなってしまいます。根強く残っているG'zOneユーザーにとって、使用期間終了までのカウントダウンがすでに始まっていたというわけです。
特に、ケータイとしてのG'zOneに魅力を感じていたユーザーは、スマホになったTORQUEに乗り換えづらい事情もあります。20周年特別企画として生まれたG'zOne TYPE-XXですが、一定程度のユーザーには確実に売れる目算があったと言えるでしょう。
外観から中身までカシオのデザイナーが関与
京セラが製造したと聞くと、TORQUEをカスタマイズしただけでは……と思われるかもしれませんが、G'zOne TYPE-XXは外観はもちろんのこと、中身のインターフェイスまでカシオのデザイナーが関わり、あたかもカシオ製端末のような仕上げにしています。
背面に搭載されたサブディスプレイはG'zOneのモチーフである円形。先代にあたる「G'zOne TYPE-X」は円形の枠に四角いサブディスプレイを内蔵していましたが、技術の進展でより完成度の高いデザインになりました。
ダクト風のデザインも単なる飾りではなく、実際に穴が開いていて内部の温度センサーに外気を届ける役割を果たしているといいます。
さらに、インターフェイスのデザインや着信音にもカシオが関わり、G'zOneを再現。着信音には、G'zOne TYPE-Xに内蔵されていたAdventureという曲に加え、当時はメモリ容量が足りずに搭載を見送っていた隠れ楽曲も収録しました。ソフトウェアについては、実装のみ京セラが担当したといいます。
スマホに慣れ親しんだユーザーがさすがにこの端末に機種変更するのはためらわれるかもしれませんが、G'zOneには確実な潜在ニーズがあり、端末もそのニーズをしっかり満たすように作られているというわけです。
一方で、KDDIとしては、あくまで高耐久端末の主役はTORQUEと考えているとのこと。G'zOneが特別企画になっているのは、そのためです。今後については「反響を見て企画し、復活するかもしれないし、出ないこともある」(近藤氏)と、曖昧な回答。G'zOneにこだわりのあるユーザーは、このタイミングで買っておいて損はない端末と言えそうです。
独特の存在感を発揮する京セラ
翻って“京セラ”という切り口でG'zOne Type-XXを見ると、同社のやや変わった立ち位置が浮き彫りになります。同社は、先にソフトバンクから発売されたバルミューダの「BALMUDA Phone」でも製造を担当。こちらもG'zOne Type-XXと同様、黒子として端末の製造に徹しています。BALMUDA Phoneもメーカーとしてはあくまでバルミューダで、ソフトバンクとの直接的な交渉も京セラではなく、バルミューダが行っています。いわばOEMのような形で、他社の端末を製造している格好です。
こうしたOEMは、中国の工場が担うことが一般的でしたが、京セラであれば、品質の高さは折り紙つき。国内キャリアはもちろんのこと、米国のキャリアにも納入実績があるため、特にスマホやケータイを開発するノウハウを持っていないメーカーにとっては、心強い存在になるはずです。コロナ禍で海外渡航に厳しい制限がかかっているなか、日本国内でモノ作りが完結するのも、日本のメーカーを相手にするうえでの強みになるでしょう。
もちろん、京セラにもTORQUEやDIGNOといった自社ブランドの端末がありますが、一方でキャリアブランドの特別な端末も数多く手がけています。例えば、ドコモに採用された「あんしんスマホ」はその1つ。電子ペーパーを採用した「カードケータイ」のような特殊な端末を開発した経験もあります。自社の名前こそ控え目にしか出ませんが、変わり種のケータイ、スマホを作る縁の下の力持ち的なメーカーとして、独特の存在感を発揮していると言えそうです。
9年ぶりG'zOne復活。KDDIが高耐久ケータイ「G'zOne TYPE-XX」を10日発売 その背景に迫る(石野純也) - Engadget 日本版
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